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春の5連勝

〈4/25 阪神 4-1 巨人(甲子園)〉

勝:村上
S:岩崎
敗:赤星

甲子園球場には半旗が掲げられ、選手らは左袖に喪章。
18日に亡くなった小山正明さん。試合前に黙とうがささげられたこの日、レジェンドたちが集う球団創立90周年を記念したレジェンズデーだったというのは何かの縁だろうか。
昔も今も闘志燃やす伝統の阪神巨人戦。

甲子園100周年の日も、今日みたいな日も、聖地に捧げるホームランを見せてくれるたのは佐藤輝明。
ランナー二人を置いてカウント2-0。相手先発赤星のフォークにバットを合わせた。
甲子園の風が今日はテルに味方したというのもあるが、力感のないフォロースルー、それなのにあそこまで飛ばしてしまうのには本当に驚かされる。
このホームランで、金曜の夜の甲子園は一気に最高潮に。
初回の大山のタイムリーもあって、これで4-0。
広い甲子園は我らがタイガースのためにある。
心配はしな…

…した。

3点差で9回表。
ショート小幡が捕球しそこないさらに一塁悪送球。
このあとマウンドの岩崎は1-6-3という曲芸でランナーを消すが、あと一人コールの中、サードの佐藤輝明の前で打球はイレギュラー。
土のグラウンドは難しい。ただ、ここが本拠地。おまいらしっかり守れし。

一方、この甲子園での戦い方を心得ていたのは岩崎。
二度目の「あとアウトひとつ」で、打席には好調キャベッジ。勝負。高めストレート!空振り三振!
「当てさせない」が最適解だった!(笑)
今日の岩崎はいつにもまして凄みがあった。
うんうん。なんだかわかるよ。(笑)

そして先発村上。前回登板は2回に5失点で敗戦投手となって、今日はさぞかし気合い入ってたと思われ、8回1失点のみの好投。
セーブのつく9回は岩崎に譲ったが、やはり完投が目指すところだったか、ベンチでは自身のピッチングに反省する表情も見えた。
そうこなくては。
次は完投、完封…いや、完投でもいいですはい勝ってくれるなら贅沢言いません(笑)

あ!8回の中野の守備、さらっと見えたけどものすごい好プレーだったことは書いておきたい。
一二塁間抜かせないポジショニングと、捕球後にすぐ脇を締めて身体が流されないから余裕まで見えた。簡単にやってのけてるけど、ほんと中野うまいなー!

試合後インタビューで藤川監督は、最後の憎いところに転ぶ打球を「春だな」と。
どっちに野球がいこうとしているかわからないこの季節をあの打球に絡めて表現したのだが、これよかった。
今日の5連勝という結果にも、何も油断することなく引き締めた。まだ春だ。しまっていくぞ。

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チカナカモリで鮮やか逆転劇!

…のまえに。
小山正明さんの訃報に触れ、寂しい気持ちです。
“精密機械”と称された抜群の制球力が持ち味だったと伝え聞く。
しかし残念ながら現役の頃を知らない私としては、打撃投手として毎日投げて強い肩ができたということや、ダブルヘッダーで投げてどっちも勝利投手になったなんていう今では考えられない数々の伝説的なお話が驚きとともに耳に残っている。
サンテレビボックス席の解説を長く務められたが、今のピッチャーへの注文はとくに多かった。完投にこだわりと誇りを持った昭和の大投手。
大きな身体でとても姿勢のいい方だったから本当にかっこよくて、野球の現場では厳しくても普段はみんなのお父さんみたいな笑顔の優しい素敵なレジェンド。
心よりご冥福をお祈りいたします。

〈4/24 DeNA 2-4 阪神(横浜)〉

勝:岩貞
S:桐敷
敗:森原

そんな日だったから先発の富田がワンチャン完投してくれたらなぁ。小山さんきっと喜んでくれたのになぁ。
5回じゃ叱られるぞ(笑)

初回のベイスターズに2点、2回にタイガースが1点。そのあとは両チームともに得点できず。
タイガースにおいては、ほぼ近本だけが一人で打ち続けていたというゲーム運び。チーム9安打のうち「近本4安打」は学会で発表しよう。

7回表、二死から近本(ここでも)が2ベースで出塁すると、2番中野が三遊間破るヒット。
近本が全速で三塁蹴ってホームイン。同点!
ネクストの森下が近本に「おいでおいで」したあと、レフト佐野からのバックホームが逸れると、塁上の中野に「回れ回れ」の大きなジェスチャー。
同点打の中野はかなりヒーローみあったが、この同点劇を一番いいところ(ネクスト)で観劇していた森下が舞台に上がったかと思うと初球ひっぱたいて確信の勝ち越し2ラン。
人差し指を突き上げ見えを切って、主役の座を一瞬にしてかっさらっていった。
マウンドの森原にしたら何が起こったのか整理する余裕もなかっただろう。きっと中野だってそうだ。中野が讃えられた時間は一体何秒だ。森下よ見事であった…(笑)

そして投手陣は6回からの継投。
1点追う6回のマウンドには岩貞。
ピンチも作ったが、代打の筒香をファウルフライに仕留めて勝利投手に。
嬉しいのに、小山さんならどうおっしゃったかって気になってるからあんまり大きな声で言えない(笑)
(岩貞おめでと!小声)

リリーフ陣の毎日の頑張りには黙って最敬礼。

今日は勝ってほしいゲームだったから、勝ってくれてありがとうだ!

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待ったで大山!第1号!

〈4/23 DeNA 2-3 阪神(横浜)〉

勝:島本
S:岩崎
敗:山崎

ああ嬉しい。

延長10回。長いゲームだった。
打っているのになかなか点が増えないもどかしさも、頼みの佐藤輝明に当たりがなかったことも、「ああそんなこともあったね」と振り向きもせず、今なら言える。まだ少し冷たい横浜の夜はほてった頬を冷やすのにちょうどいい。
…って、家やわ。潮風に酔いしれるベイサイドちゃうわ。

大山だ大山。いい加減打ってほしいと願ったホームランは、勝ち越しの決勝アーチ!
ライナー性のボールがタイガースファンの待つレフトスタンドへ吸い込まれた瞬間、霞んでいた視界が一瞬にして広がった。眠気が吹っ飛んだとも言う!

やっと出たあああ!!!大山ーーー!!!
ベンチではみんなから笑顔でヘルメットペチペチされて、仲良し近本からはナデナデもされて、肩で息してる大山は笑顔になった。汗が照明で照らされてキレイですらあった。

今季85打席目にやっと出たホームラン。
しかし大山は、10回裏の守備位置に就いたときのファンの歓声にも、試合中だからと引き締めた。
いかにも大山らしい。

大山じゃない私は、打った瞬間からずっと嬉しくて喜んでいる。岩崎がランナーを出しても怖くなかった。勝てると思った。
これを書いてる今も嬉しい。
書き終わってからお風呂に入るよ。きっとまだ嬉しいし、なんなら笑いながら眠りにつける自信がある。はっはー!!

そやなー。先発門別に勝ちがつかなかったのが少し悔やまれるが、イニング途中でランナー残して降板したの自分だからな。そりゃ仕方ないで。(大山以外への雑な扱い)
ただ、先発の仕事はしっかりやれた門別にはこれから先の活躍は十分期待してるし、期待以上のことをやってくれるとも思ってる。

そのあとのリリーフ陣がまた頼もしかった。
悔しそうな顔をして打席をあとにするベイスターズのバッターたち。楽しい♪

その中に島本の名前があるのがさらに嬉しい。
一昨年の無双の島本が帰ってきた。勝利投手は島本。当然の内容だった。

明日は、富田蓮に援護を!
森下と中野!今日みたいにまた打ってくれな!
ほんで、ゲームを決めるのはまた大山のホームランっていうね!(はよ風呂いけ)

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小幡確信の足攻

〈4/22 DeNA 2-4 阪神(横浜)〉

勝:才木
S:岩崎
敗:バウアー

7回裏。才木は2点を失いランナー二人を残して途中降板。
あとアウト一つだったからこの回踏ん張ってほしかったけれど、…って本人めちゃめちゃ悔しそうw
次はせめてイニングは投げ切ろうな(笑)

とはいえ四球5つを出し、苦しみながらも勝ち星がついたのは才木自身の踏ん張り。

これで才木は2勝2敗のチャラ。才木で借金してるようじゃ優勝もへったくれもないからここからも頼んだ!

さて!
小幡が二戦連続のスタメン出場。

木浪の状態を考慮してのこともあると思うが、小幡にとってはチャンス。
で、今日の試合は小幡のプレーが大きかった。

5回表。
先頭小幡は意表を突いたセーフティバントで出塁。次の才木が送って、というところだったが才木はスリーバント失敗。
しかし、1番近本のところで盗塁を決め、才木の失敗を消したどころか、近本のレフト前ヒットで快足飛ばしてホームイン。
レフトの佐野が捕るフリをしてみせたが、小幡は自身の目で打球判断ができていて、迷わず三塁を蹴っていた。
これぞプロの走塁というもので小幡の足でとったこの1点は大きな中押しの点だったし、打った近本も小幡の走塁を讃えた。

今年は走るというチーム方針を体現した小幡の今日のプレーは、小幡自身にも確信をもたらし、チームへ波及するに違いないのだ。だからこの小幡のプレーは1点以上の意味を持つ大きなプレーに見えた。

そしてあとはもう言うまでもなく、テルの3ベース、2ベースと、近本のタイムリーとホームランな!

ところどころで1点ずつ失うバウアーはさぞかし気持ち悪かっただろうな。
初回は内野ゴロ三つでサッサとアウトにしてみせたのにな!(びっくりしたで…)

明日もこの調子…と言いたいところだが、大山が打たないとモヤモヤ心残りがあるのも事実。
犠牲フライで打点はついたが、ヒットは内野安打の1本というのでは、何も納得していないであろう大山にそろそろ…!何かしらの1本を。

及川、石井、岩崎!今日もありがとう!

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テル2発で伊原プロ初勝利!

〈4/20 阪神 8-1 広島(甲子園)〉

勝:伊原
敗:森

8回裏、カープ5番手・岡本の初球変化球がすっぽ抜け、坂本の頭部への死球となった。
キャッチャーの石原はすぐ坂本を支えるようにして声をかけ、坂本も「大丈夫」だと岡本の心境を案じて、岡本も帽子をとって頭を下げていたが、怒ったのは藤川監督。
当たった瞬間にベンチから飛び出してきていて、当たった坂本がそれを止めるというちょっと不思議な光景に。

開幕前には、直接新井監督に死球が多いことを釘さしていた藤川監督だったから、選手が危険にさらされたとあっては、抗議すべきと判断したのだろう。

当てた岡本だって故意ではないのだからこんな騒動になってしまって動揺しているだろうけど、こっちだってたまったものじゃない。
こういうときに「新井が悪い。」という便利な魔法の言葉の出番だ。

で、実は、この騒動でちょっと割を食ったのは、伊原と佐藤輝明じゃないかと感じてる。あの二人すごかったんだから!
坂本が一旦大丈夫そうなので、死球についてはここまでにしておこう。

ヒーローは、プロ初先発初勝利の伊原と、4打席で2本のホームランを含む4安打6打点の4番佐藤輝明!

伊原は、中継ぎで見せてくれていたように今日も素晴らしいピッチングだった。
チームはここ3戦「2回」に失点し敗戦が続いていたからこの2回を無失点で乗り切っただけでもう…!
3回には伊原も二俣のファウル攻めにあってしまうもここを空振り三振!スッとした!(笑)
ほんとよく我慢したというか、今日一番の称賛をこのバッテリーに送りたい。

そしてテル!すごかった!
2本のホームランはどちらもセンター左寄りへの打球。
うまく風にも乗せたが、昨季まで浜風と毎回大喧嘩(笑)していたことを想い出して笑った。
とくに初回の2ランは、甲子園のムードも流れも一気にタイガースに有利に引き寄せた。
本人もいい気分だろうけど、ファンも同じだ。

明日は気分よく休んで、そろそろ、大山いこか!
みんな待ってんで!

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勝って…

〈4/19 阪神 0-3 広島(甲子園)〉

勝:床田
S:栗林
敗:デュプランティエ

1試合で3失策の木浪は、「自分のせいなので。頑張るだけなので。それだけです、すみません」。

自責は0ながら負け投手となったデュプランティエ。
木浪を責めるどころか、カバーできなかった自分のミスだと言った。

試合後の藤川監督は、「使っているこちらの責任」と語った。

テレビの前の私は日記に書いた。
わかった!
よくわかったから!勝って…

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粘られて ああ…

〈4/18 阪神 2-5 広島(甲子園)〉

勝:森下
敗:村上

初回二死からカープ森下の立ち上がりを攻め2点を先制。
満塁でカウント0-2、右京さんうまく打った!

タイガースの攻撃は以上になりますが、あえて追記させていただくなら、ゴロ、ゴロ、ゴロ…ゴロ…!

先発村上は、2回、カープの粘りの打線に1イニング5失点。54球を要したこの回でカープ森下には切り替える機会を与えてしまった。
序盤の3点差は決して望みなき点差ではないというのに、完投まで許し、ホームゲームでまた勝利ならず。
キィィィーーーー!!

村上は4回で降板。
このあと投げた、島本、漆原、岡留、岩貞が、無失点リレー。試合を壊さなかっただけに、そやろ!?帰ってきた島本と、漆原の2イニングがすごかったやろ!
それだけに余計にキィィーー!!

ほな!切り替えてこか!!
(どうやって!?!?)

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チーム

〈4/17 ヤクルト 5-7 阪神(神宮)〉

勝:及川
敗:バウマン

このバウマンって、大谷に50-50達成のホームランを献上したピッチャーだったか!(選手名鑑見てる)

4時間7分。野球の楽しさも、怖さも、ギュッと詰まったゲームだった。

延長11回。
途中出場の坂本の四球が効いた。
ケリをつけたのは、既に3安打で打点もあげていた近本の決勝2ラン。

勝てたことが、全部いい。丸々いい。
9回タイムリーエラーの木浪を救ったのが仲の良さで知られる近本ってのがまたいい。

誰かがミスをしても誰かがカバーをする。
次はその逆も。

プロなんだからミスするなって言いたくなる気持ちはわからないでもない。
でもプロでやっちゃいけないのは手を抜いてプレーすることであって、全力でやってて出てしまったミスなら、またやり返してくれればいいし、今日みたいに誰かがカバーしてもいい。
それよりチームがまたひとつになっていく過程を見てると感じるからゾクゾクするのだ。

テルの3ランや、森下の4安打なんていう派手な活躍もあれば、悔しい思いをしている選手もいる。
毎日全員が揃ってうまくいかなくたって、それでもいいのだ。
タイガースにそんなこと最初から期待はしていない。(おい)

日程の関係で中継ぎ登板をした門別の2イニングが圧巻。
さらに、延長に入っての及川がまたド安定のピッチング。
この二人、確実に自分たちの場所を作ってきてる。

岩貞もだ。
打者一人の場面だったが、やっと一軍のマウンドに帰ってきた。
2点ビハインドではあったものの、走者二人を置いての場面。
藤川監督の優しさと鬼の顔の両面が見える継投だった(笑)
いや、岩貞に失礼だな。これぐらいやってくれる投手だ。

岩貞には一時勝利投手の権利も。勝ちは消えてしまったけど、確かな手応えがあったことがうかがえるベンチでの表情は、自身の白星はどうだって良さそうだった。
ナイスピッチング!

嬉しい夜だ。

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松山の坊ちゃんたち大暴れ!

〈4/15 ヤクルト 1-5 阪神(松山)〉

勝:才木
S:岩崎
敗:奥川

先週10日木曜日、降雨ノーゲーム。
13日の日曜日も雨天中止。
明日は移動日のため休み。

開幕して対戦一回りしたところだというのに日程が変則的になったせいで、早速ローテの再編成などを強いられる。監督って大変やな…。よーやるわ…。

その藤川監督。
打線の組み換えも厭わずやる。
中止になった13日には、3番森下、4番佐藤輝というオーダーを組んでいた。
今日のオーダーもその並びだった。

理由を聞かれたが、藤川監督は言わない。黙っているわけではない。答えを言わないのだ。

現役時代からしっかり自分の意見を時間をかけて伝える人で(えらい。おしゃべりとは言ってない。)、監督になってからの藤川語録を聞いたり読んだりしてきたが、結局のところ、選手起用、作戦面に関してのことを読み解くことができない。

でも私はめちゃめちゃこれでいいと思っているし安心している。
手の内明かされても困る。

今はまだシーズン始まったばかりだけれど長いシーズンを戦う中で、4番森下でスタートした意味、今日打順を変えたことが、「なるほど!」って繋がってくるのかなぁ、って楽しみに思っている今日この頃なのだ。

で、藤川監督は今日も
「坊っちゃんスタジアムでね、ウチの坊っちゃんたちが頑張ってくれました」
なんて他愛のないことをわざわざ言い(笑)、紙面の文字数を埋めさせてくれつつ、真意をはぐらかす。

週の頭である火曜日を任された才木がようやく今季初勝利。
6回裏、西川遥輝に打たれるまでノーヒットピッチングだったが、回もそれほど深くなく、それに何と言っても、なんとも綺麗なセンター返しのヒットだったので、さっさと切り替えられた。私が。(おまえかい)
ノーノーは才木ならそのうちまたやれる。
前回に続いての好投、めちゃめちゃよかった!

そして、バッテリーを組んだ梅野が2打点マルチに、盗塁も記録。
梅野の盗塁久しぶりに見た!元々足のある選手だから、どんどん走ってほしいぞ!今日の盗塁はそう来なくては!と嬉しかった。
才木もゲームも引っ張って、梅野にとっても大きな一勝になったのでは。

森下、佐藤輝、大山のクリーンアップに揃ってタイムリー。
やっぱり、この3人が打ってなんぼのチーム。
投打噛み合うって今日みたいなこときっと言うんだな。(手探り)

神宮でも暴れといでー!

ほんでまた明日休みかーい!

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工藤と坂本バッテリーへ甲子園の大きなエール

〈4/12 阪神 2-3 中日(甲子園)〉

勝:松葉
S:松山
敗:西勇

9回表。藤川監督はマウンドに工藤を送った。
工藤は9日のヤクルト戦で二番手で登板したがアウトを一つしか取れず敗戦投手となっていた。

甲子園での2点差だ。工藤次第でゲームは良くも悪くも、決まる。
ビハインドの展開とはいえ重要な場面での起用に、スタンドからはどよめきが起こった。
中には懐疑的なものもあったかと想像するけれど、そればかりではなかったようにも思う。
やり返せという後押しと、この重要な場面で工藤に任せた藤川監督への感嘆と。

しかしそう単純にうまくはいかなかった。
二者連続四球で無死1,2塁。
前回登板でのストライクが取れない焦りを、まだ引きずっているようだった。

なんとか3人目の板山をダブルプレーに打ち取り二死3塁。これで落ち着くかと思ったが、4人目の駿太への1球目がまた大きく外れた。

キャッチャーは坂本。
工藤へボールを投げ返し一度座りかけたが、思い返したように審判へ断りをいれ、工藤のもとへ駆け寄った。
キャッチャーがマウンドに行くにも限りがある。だが坂本はここだと察したのだ。

坂本は少し笑顔も見せながら少し長めに声をかけて持ち場へ戻った。

「こい。大丈夫。」そんなふうに大きく頷いてみせてから座るとまた一つ頷いた。スタンドからは大きな拍手が沸き起こった。
満員の甲子園が工藤に勇気を送った。
坂本はわざと跳ねるようにして座って大きく構えた。

さぁ行け工藤!2球目投げた!ボールはストライクゾーン!
155キロの直球にバッターの駿太はファウルにするのが精一杯。
坂本はこぶしを作って工藤へ向けた。それだ、と。
続く3球目も拍手の中。同じく155キロのストレートでファウル。
そう。工藤はファウルでカウントを作れるだけの凄いボールを投げられるのだ。1-2。

そして4球目は首を振って変化球。首を振れのサインを入れたかもしれない。
これがわずかに外れカウント2-2。

一球一球、投げるたびに拍手が沸き起こる甲子園。
誰もが、坂本の構えるミットへ工藤が投げ切るのを見守った。

さぁ勝負。
坂本の柔らかな表情、いつもより大きなアクション、工藤は坂本を信じて、自分を信じて、腕を振った。
空振り三振!3アウト!!
坂本ガッツポーズ!!
スタンドからは大きな歓声と拍手。
工藤は両手で頭をおさえ少しうつむいて感極まるのを制止した。
ベンチで坂本からポンと肩を叩かれた工藤は唇を噛みしめた。
目元が潤んだように見えたのは気のせいではないかもしれない。

流れを引き寄せたこの裏は、1点差に詰め寄る攻撃を見せてくれたが、ゲームはここまで。

試合は勝てなかったけれど、ただで負けたとも思わない。
今日の工藤と坂本のバッテリーと、甲子園の万雷の喝采は忘れないと思う。

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