2002年夏。
高校野球兵庫大会の優勝候補はセンバツ優勝の報徳学園。
エース大谷(現早稲田大)、ショート尾崎(現日本ハム)らを擁した戦いは盤石そのもの。
前評判通り、決勝まで駒を進めていきました。
対する相手は、神戸国際大附属か市立尼崎か。
準決勝第二試合、9回表を終わって6-1で市立尼崎リード。
誰もが、池山さん(元ヤクルト)がいた1983年以来となる市尼の決勝進出を信じて疑いませんでした。
しかし・・・。
結果は、神戸国際大附属が9回裏に6点取って、奇跡の逆転サヨナラ勝利。
マウンドにいた市尼のエースは、マウンドで、そしてベンチで泣き崩れました。
報徳対市尼の決勝は幻に終わりました。
あれから4年。
あのとき涙に明け暮れた丸坊主のエースは、すっかりたくましくなりました。
気が付けば、プロ注目のサウスポーと評される逸材にまでなりました。
だけど、愛くるしい笑顔は高校時代とは変わらず。
寮生活を送った部屋にはUFOキャッチャーで取ったという「くまのプーさん」人形が所狭しと並んでいました。
素顔は普通の大学生。
4年ぶりの会話は自然と“あの夏の準決勝”。
「実は報徳戦でパームボールを投げるつもりだったんですよ。」
初めて聞いた衝撃の言葉。
パームボールとは変化球の一種で、手のひらにボールを乗せ、指は立てたまま添えて投げるというボール。球速は出ないが手元で不規則な変化をするため打者を幻惑するにはもってこいの球種です。
かつてはサンテレビ野球解説者小山正明さんや44年ぶり日本一の日本ハムOB・木田勇さんが得意としていたボールでした。
「そんなボール準決勝まで投げていなかったよね?」
「はい、決勝まで見せないでおこうと思っていましたから。」
高校生がそこまで考えていたのか・・・。
正直言って、ゾクッとしました。
もし、4年前、あのままスンナリ試合が終わって、決勝で両校の対決が実現していたら・・・。
ひょっとしたら、兵庫県の高校野球の歴史はまた変わったかもしれません。
だけど、一生忘れられないような悔しい負け方も今となってはいい思い出。
もちろん、野球を続けていく上ではいい教訓。
彼はそれ以来、9回のマウンドに上がる時は「まだ7回やぞ」とつぶやいているそうです。
「審判がゲームセットと言うまで一球一球、大切に投げなければいけないという事を学びました。」
そして、野球の神様は彼に次なるステージを与えました。
舞台はプロ野球、チームは・・・巨人!
そう、彼とは金刃(かねと)憲人。
来年、阪神タイガースに強力なライバルが出現しそうです!!
詳しくは10月30日放送の「ニュースEyeランド」をご覧下さい。
