年末年始コラムシリーズ第3弾。
滝川第二高校にとって運命の1月2日武南(埼玉)戦を迎えます。

試合前は余裕のポーズやったのに!
試合会場・埼玉スタジアム2002。
滝二にとっては、思い出の地。
そう、昨年10月、全日本ユース選手権の優勝を決めた地。
創部23年目にして初めて「全国優勝」というタイトルを手にした地なのです。
ただ、黒田監督はその事を必要以上に選手に言いませんでした。
「このあと、(滝二にとっては)苦手な(埼玉)駒場スタジアムの試合も控えているし。あまり球場云々というのは意識させない方がいいかなと思って。」
試合前のロッカールーム。
選手は音楽を聴いたり、テーピングをしたり、静かな時間をそれぞれ過ごします。
それは、監督も同じ。
ただ、室内にはクラシックが流れていました。
4年前初めて取り入れた手法です(この時は4年ぶりにベスト4に進出)。
「ま、いろいろとね・・・。」
やはり、この日も、監督は色々考えながら選手の気持ちを高めていました。
試合開始30分前。
偶然にもロッカールームで監督と二人きりになりました。
そこで、監督は突然グランドコートの下に来ていたシャツを見せてくれました。
そこには、無数の文字が!!
何と、選手権の出場メンバーに選ばれなかったサッカー部員全員からの直筆メッセージが所狭しと書かれていたのです。
「頑張れ!!」「和生 LOVE」などなど。
監督は常々、控え部員の気持ちを大切にして指導してきました。
その思いは確実に教え子たちに通じていました。
そして、本当に嬉しそうな顔で私に言いました。
「このシャツを着て、勝利監督インタビューしたいね・・・。」
勝った後のインタビュー、担当は地元局のアナウンサーがします。
滝二はもちろん、私。
「やりましょう!絶対できますって!!」
負ける気は全くしませんでした。

上着を着ている黒田監督
12:10試合開始
この日はサブの赤のユニフォームで登場した滝二。
ちなみに今大会からサブで紺のユニフォームが認められず、赤で試合をするのは選手権では初めて。
そのせいでは無かったと思いますが、なかなか立ち上がりからペースをつかめない滝二。
前半30分過ぎの決定的なシュートも相手DF④幸田のスーパープレーでゴールならず。
0-0で折り返しました。
ハーフタイム。
「ディフェンス!踏ん張ってくれ!!前の選手が絶対点を取ってくれるからな!!」
声の主はチームの中心・金崎(卒業後はJ1大分へ)でした。
普段は明るい性格でチームメートを盛り上げる彼の怒号にも似た大きな声で
また、イレブンの思いはひとつになりました。
黒田監督も
「今日のテーマは“希望”だったけど、本当に“希望”の持てる試合だ。負ける気はしない。あとはゴールに一直線だ!」と気合いを入れ直しました。
そして、後半。
8分でした。
一瞬の隙を付かれて、失点。
県大会でも先制されたことがなかった滝二にとって苦しい展開に。
その直後でした。

シャツ姿に変わった黒田監督
決して暖かくはないベンチで、グランドコートを脱ぎ捨てたのです。
当然、中には“滝二”のシャツ。表面には、控え選手の直筆メッセージ。
そして、ベンチの前に出て仁王立ちとなりました。
「(ベンチに入れない)みんなも付いている。まだまだ、これからやぞ!!」
黒田監督の無言の激でした。
横で見ていて、私はビックリしました。
でも、すぐに意図は分かりました。
すかさず、リポートを入れました。
この姿でインタビューをしたい、いや必ずするんだという気持ちを込めて・・・。
しかし、願いは叶いませんでした。
終了間際に1点を返したものの。1-3で敗戦。完敗でした。
試合が終わった瞬間の黒田監督はと言うと・・・、涙はありませんでした。
少し笑みがこぼれていました。
大会前に「最後の試合が終わったときどんな表情していると思いますか?」と意地悪な質問をしました。
「勝って終わるのが最高ですが、例え負けても選手が全力を出し切ってくれればそれで、いいです。」と話していた黒田監督。
選手も応援団もコーチももちろん監督も、全力を出し切りました。
戦いは終わりました。
翌日、夜のミーティングでは3年生は後輩達に向けて、2年生は新チームの抱負を全員の前で発表しました。
すでに、チームはまもなく始まる新人戦に向け、動き出そうとしていました。
ミーティングルームから出た黒田監督を
「監督一緒に風呂に入りません?背中を流したいので!」と呼び止めた3年生。
「さっき入ったばかりやからなあ・・・。」と言いながらも笑顔でお風呂に向かった監督。
プレッシャーから解放された男達に安らぎのひとときが訪れていました。
しかし!このチームの戦いは実はまだ終わってはいませんでした!!
詳しくは次回のコラムにて。