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第77回大会の全国高校サッカー選手権、私はアナウンサー1年目だった。
高校サッカーに携わって、いきなり県勢初の国立を経験。
緊張しすぎてマイクのスイッチをオンにしても、声が出ないこともあった。
ただ、1年目に大舞台で経験を積めたことは、今の自分の礎となっている。

その12年前、兵庫県勢、そして滝二初の国立進出の立役者となったのは、
通算8ゴールで大会得点王、FWの林丈統選手(現千葉)。
3回戦での清水商業戦でのハットトリックは、強烈な印象として今も記憶に残る。

今大会期間中、滝二出身のJリーガーも母校の動向を気にかけていた。
首都圏のチームに在籍している選手が少ないため、直接競技場まで足を運べる選手は限られていたが、それでも、差し入れをしたり、首脳陣を通じてメッセージを送るなど、自らが果たせなかった夢へのバックアップに懸命だった。

林選手もそのウチの一人。
残念ながら所用のため、試合を観戦することはできなかったが、
ならばと、神奈川市内の宿舎を電撃訪問。

準決勝前日の1月7日夕方。
栫監督の要請で急遽、ミーティングで話をすることになり
「何話たらいいんですかねえ」と焦りの表情をロビーで見せながらも
後輩を前にすると、そこはさすが先輩の貫禄。
「まずは国立の雰囲気を楽しんでください。1プレー1プレーを一生懸命するのは当たり前。サッカーは楽しまないと面白くないし、イコール、プレーしている選手が楽しかったら見ている方も楽しくなるもの。自分を信じてみんなを信じて頑張ってください」と
重みのあるコメントで志気を高めた。

これも栫監督からのお願いで、浜口主将が左腕に巻いている主将マークの裏に
直筆メッセージを残した。
書いた言葉は"楽しめ"!

滝二は過去3度の国立準決勝で2点しか取れていなかった。
その2得点はいずれも林選手。
今回の決勝で、12年ぶりに国立で得点を挙げた。
得点者は、林選手のメッセージ入り主将マークを巻いた浜口選手と
林選手と同じ大会8得点でフィニッシュした樋口選手。
そして、当時の林選手の背番号「9」を背負った本城選手。

伝統が受け継がれたゆえの優勝でもあった。

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