本年もこのコラム、ご愛読の程よろしくお願いします。
さて、私は年末年始、高校サッカーの中継で東京に行っていました。
今回は大晦日に神奈川三ツ沢球技場での「兵庫代表・神戸科学技術―秋田代表・秋田商業」の一戦を実況。

解説は、元日本代表GKの田口光久さん。
かつて“とんねるず”の番組に出ていた田口さんです!
放送前の打ち合わせでも丁寧にひとつひとつ答えてくださいましたし、
メッチャ気さくな方でした。
さて、この両校にはちょっとした因縁がありまして、
神戸科学技術はサッカーの伝統校・御影工業と神戸工業が統合して2004年に誕生。
御影工業時代を含めますと、26年ぶり5度目の選手権出場となります。
26年前、御影工業として最後に選手権に出た時は2回戦負けでしたが、その相手が秋田商業。
雨の中の試合、スコアは1-2。
初めて今のような48代表という形が取られた第60回大会でした。
当時の中継は、始まるのが今のようにキックオフからではなく、前半20分過ぎあたりから。
時は流れて、学校が生まれ変わって最初に出場する選手権でまた秋田商業と対戦するのです。
しかも、神戸科学技術の鈴木監督は26年前1年生FWとして試合にフル出場。
初めて公式戦で先発起用されたのが、この試合でした。
(ちなみに元日本代表FW永島昭浩さんは鈴木監督の1学年上)
「当時は移動が今のように専用のバスではなく、公共交通機関をつかってのもの。
無言で地下鉄などを乗り継いで宿舎まで帰ったのを覚えているわ」と鈴木監督は当時を振り返ります。
あ、場所も同じ神奈川県・三ツ沢球技場!
マスコミが好きそうなネタがいっぱい揃っていたでしょ(笑)
一方、秋田商業も昨年の大会で初戦PK負け。
相手はベスト4入りした鹿児島の神村学園。
あ、場所は同じ三ツ沢。
その時のメンバーが6人残っていますし、こちらも燃える要素はたっぷり。
26年前、御影工業監督としてベンチで指揮を執っていた一北四郎さんや同じく秋田商業監督だった外山純校長が応援スタンドで見守る中、試合は風速9メートルの風が吹く中始まりました。
前半は風上に立った秋田商業が主導権を握りますが、ゴールならず0-0。
後半は逆に風上に立った神戸科学技術が試合を優位に進め、
16分ついに増井(3年)のミドルシュートが決まり先制!
ちなみに増井は高校でサッカーを辞めます。
昔から絵を描くのが好きだったそうで、将来の夢は美術の先生。
「今までの中でのベストゴール!」という見事なシュート。
ボランチで普段あまり目立たないタイプだけに、活躍できてよかった!
その後、秋田商業の反撃を何とか食い止めていた神戸科学技術ディフェンス陣ですが、
後半ロスタイム、チームNO.1FW佐藤(聖)のスピードに対応しきれず
GK金本がペナルティエリアで反則。
PKを佐藤(聖)が冷静に決め、試合はPK戦へ!
ちなみに、佐藤(聖)は、県大会の決勝で右の鎖骨を骨折。
ギリギリ今大会に間に合いました。
「サッカーがいかに自分にとって大切なものかがすごく分かった」と話していただけに
最後の最後で結果を出せてよかった!!
前回大会、PKで敗れた秋田商業。
昨年の総体、PKで敗れた神戸科学技術。
どちらが“負の記憶”を拭い去るか?
CM中、私の鼓動は最高潮に達しました。
ちなみに神戸科学技術の鈴木監督は「正直言って負けたと思った。
流れが流れだったし。でも、自分が諦めたら絶対負けると思って
“さあ、こっからや”と選手を奮い立たせた」そうです。
結果は・・・全員決めた神戸科学技術が勝ち、選手権初出場で初勝利を挙げました。
それはそれは御影工業のOBの喜びようは大変なものでした。
さて、試合後、今回取材で大変お世話になった秋田商業サイドへあいさつ。
長谷川監督は、「悔しいですね・・・。でもまた帰ってきますよ!」と全国大会での再会を約束。
そして、中心選手3人にも。
一人ずつ話したのですが、異口同音に「神戸、優勝目指して頑張ってくださいね」と返ってきました。
驚きました。負けたのはPKですよ!ホント悔しいはずなのに。
さっきまでロッカールームでみんな嗚咽を漏らしていたのに。
高校サッカーが思い出に変わった直後なのに。
私のような数回しか会っていない人間に、エールを送るなんて!
私は全国大会で他府県のチームを担当するのは5回目ですが、こんなことは初めてです。
感激しました。
秋田商業、最初から最後まで好きなチームでした。
こうして、非常にすがすがしい気持ちで私の2007年は幕を閉じたのです。
こんな長い文章にお付き合い下さってありがとうございました。
昨年同様、この続きは②でお伝えします。
近日中のアップを・・・頑張ります!