カメルーンで28年前の恩返し ~阪神淡路大震災で実家が全壊 淡路島の高校教諭が国際協力~

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JICAの青年海外協力隊として、淡路島の高校教諭がカメルーンで小学校教育の支援に取り組んでいます。28年前の阪神淡路大震災で多くの人に助けてもらった恩を何かで返したいと、カメルーンで活動する男性を取材しました。

 

淡路島から青年海外協力隊としてカメルーンへ

(ギターで歌う様子)「幸せなら態度でしめそうよ。ほらみんなで手をたたこう」

洲本市の兵庫県立洲本実業高校教諭の片山徹也さん(38)。2022年7月にJICAの青年海外協力隊としてアフリカ大陸西南部のカメルーンに派遣されました。

現在、カメルーン中央州のンバルマヨ市の公立小学校で児童たちに音楽や体育などを教えています。

片山さん
「もともと高校教諭で、国語という枠の中でやっていました。小学校でしかも現地の先生と一緒にやるということで、何をしようかなと。思い切って好きなことやろうと思って、ギターを担いで音楽をやってみました」

カメルーンでの授業の様子

カメルーンの児童たちが歌う様子
「頭肩膝ポン。膝ポン。膝ポン。頭肩膝ポン。目耳口鼻」

 

なぜ海外協力に?根幹は自身の阪神淡路大震災の被災経験

思い切ったことをやってみたいと、JICA(独立行政法人 国際協力機構)の青年海外協力隊に応募しましたが、その根幹にあるのは、28年前の阪神淡路大震災(死者6434人・行方不明者3人)の被災経験です。

片山徹也さん

片山さん
「被災した時にいろいろな人に助けてもらって、例えば豚汁いただいたりとか、ペンをいただいたりとかして、すごくいろいろな人に助けてもらったにもかかわらず、僕自身がそういったことを何もできていないなと思って。形は違っても何か自分自身が受けた恩を他の困っている人に役立てたいなと思ったのが根本にあるんだなって」

 

1995年1月17日 阪神淡路大震災(震源地:淡路島北部)M7.3

阪神淡路大震災の震源地に近い旧北淡町(淡路市)。多くの家屋が倒壊し、39人が亡くなりました。片山さんの自宅も全壊しました。

片山さん
「ぱっと目を開けたらごーっと揺れて。上から砂が落ちてきて目に砂が入って、うわー痛いっていうのがすごく印象に残っていること」

全壊した片山さんの自宅

当時10歳。寝室の隣は天井が崩れ落ちましたが、おじに助けられ無事でした。2019年、教師として子どもたちに自らの震災体験を語る片山さんを取材しました。

 

2019年7月 兵庫県の防災ジュニアリーダー育成合宿(南あわじ市)

片山さんが県内の中学生と高校生たちに語る
「こんなつらい思いしたんやから、こんな嫌な思いしたんやから、これ以上涙流す人がおってほしくない。これ以上つらい思いを多くの人にしてほしくない。できることとしては伝えてほしい。これから震災を体験していない人たちに」

もともと国際協力に関心があった片山さん。青年海外協力隊に自ら志願しました。

兵庫の生徒たちに被災体験を話す片山さん

片山さん
「海外で働いて海外の方がいいやって仕事辞める人が多いけど、僕の場合は必ず恩返しせなあかんなと思っていて。育ててもらった兵庫県や淡路島の人に自分の活動を。2年間短いですけど、その活動で持って帰れるものはいっぱい持って帰って、それも1つの恩返しかなと思っています」

 

28年前の震災の恩返し アフリカの地へ

28年前の恩を違う形で世の中に返したいと、2022年7月、アフリカに向けて出発しました。初めて訪れるアフリカの地。派遣されたのは、サッカーで有名なカメルーンでした。普段は国語の高校教諭。小学生を教えるのは、初めての経験です。その上1クラスは80人から100人と大人数です。
 
片山さん
「子どもの数が多い分、どうしても画一的な昔ながらの教育、日本でもやってきたような黒板に書いてそれを子どもたちが必死に写す。暗唱させる形の授業がほとんどです。そういう風にならざるをえない状況があるなと思います」

児童たちは、アルドワーズという黒板にチョークで文字を書いて、先生に見せてからノートに書き写していきます。

片山さん
「教科書は誰も持っていなかったですね。学校にもよるんですけど、ほとんどの学校では子どもたちは教科書を持っていなくて、持っているのは小さなノートと短い鉛筆1本、ボールペン1本。消しゴムがあったり、なかったり。ものを壊れても壊れても使っている。ものを大事にするというか、大事にせざるをえない事情があると思いました」

週4日、公立校4校で授業を行い、週1日はJICAの教育事務所で働いています。体育・音楽・図工を担当。特技のギターを活用しながら授業をしています。困ることと言えば、突然ライフラインが途絶えること。2週間断水が続いた日もあったそうです。

ギターでの音楽の授業

「実際生活をする時も停電したり断水したりする時に、ふと思い出すことがあって、災害の時ってこんな感じやったんやなとか。日本だったら災害の時以外ありえへんことが日常に起こっているんだなというのを感じるので、ここに普通に生活しているだけでも災害時のことがふと蘇った時に自分はそれを心のどこかに感じながら生きているんだなということを感じます」
誰かの役に立ちたいとカメルーンにやってきた片山さん。児童たちには、自分で考える力や人間力を育てる情操教育を。そして、現地の教員と一緒に何かに取り組んでいけるよう様々な提案をしていきたいと考えています。

 

日本のありがとうの文化を伝えたい

片山さんと子どもたちの会話
「ありがとうございました。ありがとうございました」

片山さん
「日本文化を伝えてあげてほしいという要請もありました。僕は教えたいなと思っているのは人に感謝する心であったりするので、必ず授業の終わりには挨拶としてありがとうございましたという挨拶を入れるようにしています。子どもたちにありがとうという言葉を覚えてもらって、人に感謝をする、何かもらった時にありがとうと言える。フランス語で言うとメルシー(ありがとう)。メルシーボークー(ありがとうございます)。メルシーという風に言えるような。それが自然に言えるような関係性を築けるようにしていきたいです」

ありがとうと話すカメルーンの児童

片山さんと子どもたちの会話
「ありがとうございました!ありがとうございました」

運動することが多く、10キロ痩せました。任期は来2024年3月までの1年半。
カメルーンで得た経験を今度は兵庫に持ち帰るつもりです。

片山さん
「生きているってこういうことなんだなということを、生きていることの素晴らしさであったりとか、子どもたちの目の輝きであったりとか、人々の生き方であったりとか、そういったものを持って帰ってできるだけ多くの子どもたちや住民の方、県民の方に伝えていきたいなと思っています」

 

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