2030年めどに国際便就航 神戸空港国際化 期待と課題

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9月、神戸空港の屋上展望デッキにオープンしたのは、人気ミニチュア写真家・田中達也さんの常設ミュージアムです。食品や日用品を別のものに見立てた遊び心満載のアート作品が並びます。

空港に出来た新名所の完成を喜んでいるのは、関西エアポートの山谷佳之社長です。

(山谷社長)
明るい時代に向いていくということで、きょうオープンを迎えたことをうれしく思います。
国際化も含めて我々はチャレンジだと思っている。

9月18日に大阪市内で行われた「関西3空港懇談会」。兵庫県の斎藤知事や神戸市の久元市長をはじめ、大阪府の吉村知事や関西経済界のトップなどが一堂に会しました。

会合では、関西国際空港の2025年の関西万博に向けた受け入れ態勢の強化や、年間発着回数30万回の目標設定、さらに、神戸空港の国際線運用に関する議論が交わされました。

話し合いの結果、関西万博にあわせて神戸空港に国際チャーター便の運用を開始すること。2030年をめどに国際定期便を就航させることで合意しました。

(神戸市 久元喜造市長)
神戸空港の国際化は長年の悲願でしたから、悲願に道筋がつけられたことには率直に喜んでいます。

(兵庫県 斎藤元彦知事)
関空がハブ空港として、補完を神戸空港がしていく。関空ファーストという考え方を共有しながら。

会見の中で度々登場した言葉、「関空ファースト」とはどういうことなのでしょうか。航空行政に詳しい関西学院大学の上村敏之教授に話を聞きました。

(上村教授)
(神戸は)国際化を蹴って空港を作ったという歴史を背負っていますので、そういう意味では関西国際空港をファーストにしないといけない。
関西国際空港がメインであって、その補完として神戸空港だという位置は崩せない。

関西で国際空港建設の流れが生まれたのは50年以上前のこと。アクセスの利便性から神戸沖が建設地として有力視されていましたが、1973年、当時の宮崎辰雄神戸市長らが騒音などの公害を理由に反対。最終的には神戸沖ではなく大阪湾の泉州沖に関西国際空港が建設されました。

(上村教授)
そのあとに神戸の方で空港を作ろうという話になって議会でもまとまり、国交省にお願いしに行くということになった。
ところが、やはり国際空港をいったん蹴っていますので、国としては(神戸が)国際空港を持つことは難しいとなった。

神戸空港は建設に対して反対の声などありましたが、2006年に開港。以来、国内線専用の空港として、発着枠や稼働時間に制限がある中で運用されてきました。

国際化の転機となったのは、インバウンド需要で関西国際空港の利用者が増加し、発着枠が不足する可能性が出てきたことに加えて、もうひとつ大きな要因がありました。それは、”関空”を襲った自然災害です。

(上村教授)
2018年に台風21号の被害が関西国際空港でありました。この時、高潮で関西国際空港の電源が失われて人々が取り残されたのと、関空橋という橋が損壊した。
この時にもうひとつ国際空港を関西として持つべきじゃないかという話が出てきて、それが神戸空港の国際化を後押ししたといわれています。

ようやく動き出した神戸空港の国際化。しかし、まだまだ課題も残されています。

上村教授によると、国際線を就航させるには、現在のターミナルビルのほかに税関や検疫所などを備えた国際線ターミナルを建設しなければなりません。

また、市街と神戸空港を結ぶ交通手段の強化も必須で、ポートライナーの他にもリムジンバスの運用や道路の拡張といった交通網の整備も必要となります。

(上村教授)
国際化というのは手段であって目的ではない。目的というのは神戸や兵庫県をどうやって活性化していくかだと思う。
なので、神戸市・兵庫県としてきっちり神戸空港をどうやって活かすのかということを考えなければいけない。
ただ、そのためには結構大きな金額の投資がいるので、そこの金額をどうするのかという問題はありますけど、なかなか元気がない神戸とか兵庫県の中でも元気がないところがありますけど、それを元気にさせるためには空港をどう使うのかを前向きに考えることが大事。

神戸・元町にある南京町。神戸観光の定番スポットですが、外国人観光客の取り込みは大阪や京都に後れを取っています。

観光地も神戸空港の国際化に期待を寄せます。

(南京町商店街振興組合 曹英生理事長)
コロナ前も皆さんが思っているほどインバウンドのお客さんは多くなかった。
(国際化は)8年後になると思うんですけど大歓迎。我々の次の世代、若い人も経営者は喜んでいる。
「国際都市神戸」と言われているので、よりその実態に近づけるように、神戸市も市民も一緒になって協力して、神戸のブランディングづくりを始めても遅くないと思う。

開港から16年。悲願の国際化へ。兵庫の魅力を世界に発信する拠点として、いまようやく進みだしたばかりです。

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