阪神 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
中日 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
節目の記録というのは選手も大事にされていますし、中継をする我々も大事にしたいものです。通算2000本目のヒット、通算300号ホームラン、通算100勝、プロ初ヒット、プロ初勝利、などの記録はしっかりとお伝えするのがセオリーです。あるルーキーがプロ初ヒットを打ったら、そのボールの行方は必ずどこかのカメラで追いかけ続けます。中継をご覧になっているみなさんも、相手チームからタイガースベンチにボールが回り、それが初ヒットを打った選手に渡されているところを目にしたことがあると思います。
それとは別に、例えばある選手の移籍後初ヒット・初勝利、というのはそのボールの行く末まで追うことはあまりありませんが、これも同様に中継では大事にして見せたい場面だと思っています。
ナゴヤドームで行われた2017年8月20日の試合は息詰まる熱戦となりました。先発の能見投手が5回2失点でマウンドを降りると、そのあとは石崎・高橋聡文・桑原・マテオ・岩崎の5投手がドラゴンズ打線を無安打に抑え続けます。一方のタイガース打線は、あと一歩が遠くなかなか点を奪えません。試合はそのまま延長戦へ突入します。
延長戦でもイニングの合間にはCMが当然入ります。ドリス投手が抑え、10回の裏が終わってCMとなり、「次のイニングはどういう風に中継を進めようかな。」と考えていました。ドラゴンズのピッチャーが岩瀬投手に交代するタイミングでもありましたし、「これまでの試合をここで一度振り返ろう」ということで、それまでのゲームのハイライトVTRを出すことに決めました。
CMが終わりました。中継に入り「それではこれまでのハイライトです。」という実況アナウンサーの声でハイライトVTRを出します。あらかじめ担当者にVTRの時間の長さ(尺)を聞いていて、この尺なら問題ないと思っていましたが、思ったより攻守交代がテンポよく行われていきます。岩瀬投手の投球練習が終わり、タイガースの攻撃は代打の森越選手から始まります。
森越選手が打席に入りました。VTRはちょうど山場の部分に差し掛かります。「1球だけなら投球を生で見せられないのは仕方ないかな。VTRを降りたらすぐに初球のVTRを見せれば、スコアブックを書くことはできるだろう。」と思っていました。するとその初球、森越選手が岩瀬投手の投球をとらえました。打球はレフトへ、森越選手のタイガース移籍後初ヒットとなりました。
中継では…まだハイライトVTRを流していました…。ハイライトVTRから生の映像に切り替わると、そこには④カメさんの撮った1塁上にいる森越選手の姿が。その直後にヒットの様子のリプレイVTRを出しましたが、記念すべき森越選手のタイガース初ヒットを生で中継することができませんでした。森越選手に大変申し訳ないと思った私は、中継スタッフのみんなが聞こえる連絡線で、本人に聞こえないのに「森越選手ごめん!」と叫んでしまっていました…。
先頭の森越選手がヒットを打ったことで大チャンスに!その後鳥谷選手の勝ち越しタイムリーで森越選手はホームを踏み見事勝ち越しました!ここでドラゴンズのピッチャーが交代したので、その模様のイニングリプレイVTRをその間に出したので、森越選手のヒットのVTRをもう一度映すことはできました。私のせめてもの罪滅ぼしの意識も若干ありました…。
ただ、やはりいくらVTRを流そうが、その瞬間を生で映すことのほうが、中継をする側も、ご覧になる方の側も意味があると思います。今思うとハイライトVTRを無理やりでも途中で終える、という判断もできるかもしれませんがこれはやはり結果論でしかありません。答えが無いのが中継の楽しさでもあり、恐ろしさでもあります。
この試合の2日前の中継で、代打の森越選手がショートへゴロを打って、走り出した瞬間に転んでしまった、という打席がありました。その後の森越選手と、ベンチで後ろにいた福留選手のリアクションを中継で映した、ということがありました。そのうえでの、その日の中継だったので、きちんとかっこいい森越選手の雄姿をもっとフィーチャーできれば、中継をずっとご覧になっている方々にもより森越選手の活躍を喜んでくれたはずです。
明るいキャラクターでベンチに入ればムードメーカーとしてチームを盛り上げた森越選手。ファン感謝デーでの姿でもタイガースファンの皆さんから愛された選手です。タイミングが合えば森越選手に謝りたいなと思っていました。おそらく急にそんなこと言われてもご本人は「はぁ…」となると思いますが(笑)。今シーズンからライオンズへ加入した森越選手を、私は陰ながら応援し続けたいと思っています!
次回も「私の記憶に残るあの試合」としてある試合を取り上げます。みなさんは、試合中にある選手がミスをしたり、思い通りにプレーすることができず苦しんでいたりする様子が中継で映ったときに、どのように思いますか?次回はそんなときに私の優しさ(?)が中継を邪魔してしまったのではないか、という試合をお伝えします。お楽しみに!
虎ギャル応援日記に後日談あります