高騰する新築マンション 神戸市が検討する「タワマン空室税」の導入意義とは

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  • 不動産経済研究所 笹原雪恵大阪事務所長

  • 投資目的で住む外国人は少ないと話す住人

  • 京都市では2029年から「空き家税」を導入

  • 神戸大学大学院法学研究科 渕圭吾教授

  • 地域に合うまちづくり進めると話す神戸市の久元市長

現在、神戸市は、タワーマンションを対象とした「空室税」の導入を検討しています。

「空室税」と神戸市の住宅政策について考えます。

タワーマンションがそびえ建つ神戸の都心部。

中央区にはこれまで、24棟のタワーマンションが建設されました。

神戸市が2020年に条例改正した「タワーマンション規制」。

神戸市の久元市長は、タワーマンションは将来的に廃墟化する可能性が高いとして、神戸市は中央区の都心機能誘導地区でタワーマンションなど大規模な住宅の建築を条例で制限しています。

不動産経済研究所の調査によると、7月の新築分譲マンションは、神戸市で1平方メートルあたりの単価が109万円、70平方メートルに換算すると、7630万円と近畿圏で最も高くなっていて、市内中心部の物件が価格を押し上げているといいます。

旧居留地に建設中の13階建のこちらの新築マンション。

販売する東京建物によると、ファミリー向けの中心価格帯は、9000万円台にもかかわらず、会社員を中心に400組以上がモデルルームを訪れるなど販売は好調だそうです。

神戸市における新築マンションの価格上昇について専門家は、建築コストのほかに、ニーズの変化を要因に挙げます。

不動産経済研究所 笹原雪恵大阪事務所長

「いまは駅からどれだけ近いかというところに資産性、資産価値ですね。三宮周辺では大規模マンションが建たなくなったということで(新築販売)戸数を減らしていっている。都心のニーズにはちょっと合致していないというのが神戸市の動きなのではないかなとみています」

笹原さんによると今の若い世代は、資産価値やタイムパフォーマンスを重視して都心部や駅近で坂の少ないエリアのマンションを選ぶ傾向が強いといいます。

また、東京や大阪などと異なり建築規制がある神戸では、流通量の不足が価格高騰の要因だと分析します。

値上がりが止まらない新築マンション。神戸市の久元市長は、投資目的での購入による「空き部屋」の増加や価格高騰を問題視。

空き部屋が増えることで既存のタワーマンションも廃墟化のおそれがあるとして、5月に有識者による検討会を立ち上げるなど非居住者への課税も視野に入れた議論を進めています。

神戸市 久元喜造市長

「外国人投資家を含む投資需要が大変旺盛にみられる。タワーマンションにおける非居住者対応は大変重要な課題だ」

このように話す久元市長ですが、実際タワーマンションの住人はどのような理由で購入しているのか。

この女性は老後の生活を考えて購入したそうです。

タワーマンションの住人

「将来的に車の運転をしなくなった時に娘と交代して娘が郊外で子育てをして都心は買い物や病院も近いので世話もしやすいので家族会議して決めました。外国の方が住まれているのをお見かけしますがファミリーで住まれているような感じで投資目的とか思ったことはないですね」

また、セカンドハウス利用など職住近接のために居住する所有者もいるということです。

都心部で高騰するマンション。この状況について久元市長は、人口減少を一定許容したまちづくりを目指す神戸市は、多様なライフスタイルに合う戸建て住宅を郊外を中心に2030年までに2500戸以上供給を進めるとしています。

「空室税」は、空き部屋増加による管理不全を招き廃墟化するおそれがあるという理由で導入が検討をされていますが、転勤などで一時的に住まなくなる方や2拠点生活をされている方など課税により不利益を被る可能性があります。

笹原さんによると規制後は、投資用のワンルームマンションが増加するなど小規模物件が中心となっているため神戸市内においては、タワーマンションへの投資はあまりみられないそうで、検討している空室税の導入効果は疑問だとしています。

神戸市が導入を検討しているタワーマンションの空室税。

住宅に関連した法定外税ではこのようなものもあります。ワンルームマンション税。

東京都豊島区でワンルームマンション増加を抑制する目的で2004年に施行されていて1戸につき50万円課税されます。

また、別荘などの空き家問題が深刻な京都市では、空き家の所有者を対象にした空き家税が2029年に開始する予定です。

いま検討されている神戸市の空室税。空室税導入について専門家はどのように考えているのでしょうか。

神戸大学大学院法学研究科 渕圭吾教授

「税収目的というよりは人の行動を変えるという意味では京都市の税金と似ていると思います。空室税というのが非常に税率が高いことになると果たして神戸市がそんなことまでできるのか。国の政策としてやるべきではないのかというような懸念が出てくる可能性はあります」

導入について税収の使い道も重要な議論が必要と指摘します。

「空室税が仮にタワーマンションを三宮周辺に建てることを抑制する目的のものだとすると既存のマンションの所有者に税負担を求めることが適切なのかという問題は出てくると思います」

また渕教授は神戸市が示している住宅政策に対しては、車を持たない若者が増えるなか、バスの減便が相次ぎ、公共交通機関に頼れない状況では、都市部の駅近に住むことが現実的な選択肢になるとも指摘しています。

実際、タワーマンションの居住状況はどのようになっているのでしょうか。

はい、こちらは神戸市が有識者会議で示した市内タワーマンションにおける非居住率のグラフです。

上層階に行くほど高い比率となっていますが、平均16・6%が空き家の可能性があると神戸市は指摘しています。

ただこのデータは、住民登録の有無が基準です。空き家の基準や課税の条件など慎重に検討する必要性があります。

実際、タワーマンションではどれくらいの空き家があるのでしょうか。

中央区のタワーマンションの管理組合が、神戸市に報告している届出内容です。

いずれのタワーマンションも空き住戸割合が、5%以下となっていて修繕積立金ほぼ100%と高い収納率となっています。

この届け出のあったタワーマンションのある管理組合に管理状況を問い合わせたところ、「空室はほぼゼロに近い状態で賃貸も持ち主とちゃんと連絡がついている修繕積立金などのトラブルは現在発生していない」ということでした。

専門家は空室税を検討する以前に、マンションの適正な管理に加え、コンパクトなまちづくりが求められると提言します。

不動産経済研究所 笹原雪恵大阪事務所長

「神戸市はオールドタウン化してきているというところもありますので、スマートタウンとコンパクトシティが結びついたこれまでにないような

まちづくりをできればおこなっていただきたい」

神戸大学大学院法学研究科 渕圭吾教授

「ある程度の人口減少はやむを得ないとその上でバランスの取れた神戸市にしていこうとお考えなところは非常に賛同できます。ある程度コンパクトに人が住むエリアを限定しつつそこのインフラを充実させるという方向が現実的だと思います」

神戸市 久元喜造市長

「全国ひと色ではなくてそれぞれの地域によって自治体によって考え方が違う。神戸は広いですから神戸のさまざまな広い地域の中にあったまちづくりと

住宅供給のあり方を進めていきたい」

空室税について検討する神戸市の有識者会議は次回、11月に開催される予定です。

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