第10回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑧ ~フロアディレクターのお仕事 その4~

『サンテレビボックス席』はご存じのとおり、プレーボールからゲームセットまでの完全中継でお送りしています。あの有名な1992年9月11日、タイガースとスワローズの6時間26分という日本プロ野球の最長試合も最後まで中継するほどです。サンテレビの社員が言うものではありませんが、良い意味でおかしいですね…。

「試合の途中ですが、〇〇テレビをご覧の方とは9時でお別れとなります。ご了承ください。」
というアナウンサーのお知らせを、中継をご覧の方はお聞きになったことがあると思います。『サンテレビボックス席』は、試合によってネット局でも同じ内容が中継されているのです。その場合、他の放送局では必ずしもプレーボールからゲームセットまで中継されているというわけではなく、試合の途中から番組が始まったり、逆に試合の途中で番組が終わったりということもあるのです。

「そもそもネット局って?」
と思われる方も多いと思います。サンテレビは独立局という、たとえばテレビ朝日さんと朝日放送さん、または日本テレビさんと読売テレビさん、のような系列に属さないテレビ局ですが、『ボックス席』では同じく独立局であるKBS京都さんや、三重テレビさん、岐阜放送さん、といったテレビ局にサンテレビの中継映像をネットしているのです。

このネット局の途中乗り、途中降りというのがFDの時間管理の中では緊張するところなんです!(中継車Dや実況アナウンサーもですが…)
と、言いますのも野球はいつ投げ始めて、打って、走って、攻守交代になって、というのが当然決まっておりませんので、例えばちょうど夜の7時にどういう状況なのかは予測がつきません。ただし、ネット局が7時から中継が始まるということは決まっています。ネット局の中継をご覧になった方は、いきなりホームランが出て喜んでいるタイガースファンのアップが映る、ということもあるわけです。
 
上記のような場合はある意味仕方ない部分もあるのですが、例えば実況アナウンサーと解説者の方が話をしている途中で急に7時を迎えると、ネット局をご覧の視聴者の方はいきなり何の話をしているのか分からない話を途中から聴くことになるのです。

それを防ぐため、「ポーズ」「頭づけ」というのをFDの指示で実況アナウンサーにしてもらわないといけません。「ポーズ」というのはそれまで話をしていたことをアナウンサーにまとめてもらって、何秒間か黙る、というものです。7時からネット局の中継が始まる場合、そこに向けて1分前から細かくFDが指示を出して、7時になる数秒前に話をまとめてもらわないといけません。(よほどの試合が動くようなプレーが起こった場合は別ですが。)
その「ポーズ」をとって、7時を迎え、ネット局の中継が始まったら「頭づけ」をしてもらいます。「甲子園球場での阪神対広島の一戦。試合は4回表の…」という状況説明を実況アナウンサーが行うのです。

事前の打ち合わせでもきっちりと確認をしますし、番組のレシピでもあるキューシートにはその旨が書かれています。ただ、ちょうどネット局の中継が始まったり終わったりするときに試合が白熱した展開だったりすると、ついついFDも中継車Dも実況アナウンサーも忘れそうになったりすることもあります…。ここは気を付けないといけません!

もう一つ複雑なのがCMの途中にネット局の中継が始まる場合です。90秒CMの途中でネット局向けに話をして、サンテレビのCMが明けるタイミングでポーズをとらないといけませんので、実況アナウンサーはもちろん、指示を出すFDも緊張の一瞬です。サンテレビだけでなく、ネット局での中継をご覧いただいている視聴者の方々に観やすい、聴きやすい中継をできるよう今後も心掛けていきます。

現在、ネット局は1試合でも最大2つか3つですが、スポーツ部ディレクターの先輩に話を伺うと、昔は7つや8つものネット局に同時に中継されていたこともありました。そのときなどは、もっと細かく「ポーズ」や「頭づけ」が発生するので、「大変やったやろなぁ…。自分やったら頭の中がぐちゃぐちゃになるわ…。」とその話を先輩から伺っているときに想像して吐きそうになったのは秘密にしておいてください…。

FDの説明だけでもう4回分も書いてしまいました…。次回は現場にいる二人のFDのうち、もう一人のFDの主な役割でもある「ヒーローインタビューのアテンド」に関して書かせていただきます。FDのお仕事編は次回がラストです!お楽しみに!

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