地域経済を支える神戸の「ものづくり」 人材育成と支援で未来を切り拓く

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  • 日本最大規模を誇る「神戸市ものづくり工場」

  • 人材育成が課題と話す栗山さん

  • 製造業の事業所は25年で半数近く減少

  • 教育プログラムや支援制度が不可欠と話す山下准教授

  • 起業支援イベントには100人以上が参加

  • 前川さんは事業継承後、ブランド戦略や製造体制の再構築に着手

  • スタートアップ支援と企業同士の交流拠点として活用される「ものテラス」

  • ものづくりの楽しさを伝えるきっかけとしてドローンサッカーを活用

  • 新規参入を促すことが大事と話す神戸市の久元市長

  • 神戸のものづくりの未来を担う「ものづくり工場」と「ものテラス」

地域経済を支える神戸の中小製造業。しかし、後継者不足や人材育成の課題が深刻化しています。

一方で、新しい挑戦を後押しする取り組みも始まっています。神戸発の「ものづくり」の未来を探ります。

神戸市兵庫区にある「神戸市ものづくり工場」。

阪神淡路大震災で被災した町工場の復興を目的に「復興工場」として1998年に建設されました。

現在、約100社が入居する国内最大規模の中小製造業向け賃貸工場です。

この工場に震災後入居し、50年近くゴム製品を製造してきたこの会社は、2026年に事業を家族に引き継ぐ予定です。

地域経済を支える中小製造業。

しかし、後継者不足や海外製品との競争など、課題は山積しています。

栗山プレス工業所 栗山崇 社長

「長男が現場を見ないといけないので、会社は長女が後を継いでくれるので、いまは家族で継承するしかないんです」

この会社でも人材不足を補うため、外国人技能実習生を受け入れています。

それでも、広がる技能の領域に対応するためには、人材育成は避けられない課題です。

栗山崇 社長

「ゴムであればいいという感じではなくなりましたので、今は一つ一つ教えていかないと仕方ないと思います」

神戸市の製造業は、2021年時点で約3500事業所、従業員数は約8万3000人。

しかし阪神淡路大震災直後の1996年には、約6600事業所あり25年間で半数近くまで減少しました。

さらに、約3分の2は従業員10人以下の中小零細企業で家族経営が中心です。

後継者不足や人材育成の課題が数字からも浮き彫りになっています。

中小企業問題に詳しい武庫川女子大学の山下紗矢佳准教授は、「変化に対応できなければ事業自体が消滅しかねない」と警鐘を鳴らします。

武庫川女子大学 経営学部 山下沙矢佳 准教授

「安い海外製品など代替されるものに、取って代わってしまったのはすごく大きいと思います。変わっていかざるを得なくなることが実際に起こっている。なかなか自立することが難しい状況と思います」

さらに山下准教授は、人材育成の仕組みが十分に整っていない中小企業こそ、技術力向上に向けた教育プログラムや支援制度が不可欠だと指摘します。

山下沙矢佳 准教授

「背中を見て学べというのは少し減ってきたと思いますが、時間外に何か教育的なことをしてくださいとも言えない。教育環境を整えていく支援をすることが、行政に求められる」

12月4日、神戸で起業支援イベントが開かれ、100人以上が参加しました。

参加者からは、異業種交流や支援機関による相談など充実したサポートへの期待の声が寄せられました。

イベントの参加者

「私と一緒に仕事をしたいと思ってくれる方が、たくさんいたらいいなと思っていてイベントに来ました」

「一言一言胸に刺さるアドバイスがたくさんあって、来て良かったと思います」

主催者は、支援機関を積極的に活用してもらいネットワークを広げてほしいと、今後の連携に期待を寄せています。

神戸・元町に店舗兼作業場を構える登山用リュックなどを製造するこの会社は、支援機関の事業承継支援制度を活用し、5年前、創業者から事業を継承しました。

熾リ 前川拓史 社長

「創業者に引退するからと言われて、それもったいないですよと。こんな技術もあって、神戸ならではのブランドなんで、頑張っていきましょうよみたいな話をずっとさせていただいていたのがきっかけです」

もともとセレクトショップを経営していた前川さん。

製造業の経験はなく、当初は自分が後継者になることなど考えてもいなかったといいます。

前川拓史 社長

「一緒に探したんですけど結局見つからず、じゃあもう廃業するしかないかという感じだったので、じゃあ僕やりますわということで、事業承継させていただきました」

前川さんは、創業時から変わらない基本コンセプトを守りながら、アパレル業界で培った経験を活かし、ブランド戦略の強化と安定した製造体制の再構築に取り組みました。

前川卓史社長

「以前から付き合いのあるセレクトショップとか、ブランドとのコラボレーションであったり、登山だけではなく「街と旅」をテーマに掲げて現在やらせていただいてます」

12月8日、「神戸市ものづくり工場」内に、スタートアップの支援と企業同士の交流を深める拠点「ものテラス」がオープンしました。

ミーティングルームやウェブ会議用ブースが無料で利用できるほか、個室ブースに本社機能を置くことも可能です。

「ものテラス」に入居したこの会社は、2020年に創業しました。

本業の製造業と並行して進めてきた教育部門を分社化し、ものづくりの基礎も学べる「ドローンサッカー」の部活動を、神戸市などで運営する予定です。

TKエンジニアリング 玉野興昌 社長

「基本的にデジタルスポーツですが、保守とかメンテナンスや組み立てだったり、技術の複合的な要素を含んでいるスポーツなので、ものづくりと相性がいいので導入しました」

玉野さんは、子どもたちにものづくりの楽しさを伝えるきっかけづくりこそ、人材育成の原点だと考えています。

玉野興昌 社長

「子どもたちが興味を示さないというのは、子どもたちが悪いのではなくて、ものづくり業態自身が魅力がないと思うんですよ。ものづくりって楽しいよというのを子どもたちに見せることで、将来こういう業界もあるよという選択肢として入れてもらえたらと思っています」

ただ、12月現在「ものテラス」に入居しているのはこの1社のみです。

この状況について神戸市の久元市長は…

神戸市 久元喜造 市長

「神戸はものづくりのまちとして発展をしてきましたから、ものづくりの分野にも、新規参入が起きてくるということが大事です。利活用を図っていきたいと思いますが、作ったばかりなので今後の推移を注意深く、まずは見守って情報発信をしていく」

神戸市の雇用と技術を支えてきた中小製造業。

目指すべき未来像とは…専門家は、経営者の意識改革が何よりも重要だと指摘します。

武庫川女子大学 山下沙矢佳 准教授

「神戸らしさをどう打ち出していくのかが重要でしょうし、仕事をこなすだけではなくて、新しい発想を持ち、新しい事に挑戦する余裕も必要になってくると思うので、ぜひ経営者の方には意識していただきたい」

神戸市 久元喜造 市長

「非常に大きな柱が事業承継の支援です。金融機関との間の役割分担や連携を図りながら進めていくということが大事」

神戸のものづくりを次の時代へ。

神戸発のイノベーションが次の時代を切り拓きます。

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