これは私がタカラヅカ沼に落ちた記録のような日記のようなものである。
ヅカ兄の生霊に急かされてタカラヅカ布教Blu-rayの視聴合宿に突入した私の運命やいかに。
まず助かったことには、スカステの録画は主立ったスターが登場する度に芸名がテロップで出されていた。人物認証が苦手な私に大変やさしい仕様である。おかげで現在の私はある程度タカラジェンヌの個別認識ができるようになった。
ヅカ兄のご贔屓・礼真琴さんはそれはもうとんでもなく歌が上手く、ダンスがキレキレで、フレッシュなお芝居も素晴らしく、今までのヅカ兄の熱弁も納得のスターであった。
そして、礼さんと同じく歌ウマで名を馳せた望海風斗さんも、やはり稀代の歌姫である真彩希帆さんとタッグを組んでとんでもない歌唱力を浴びせてきた。このトップコンビの現役時代にギリギリ間に合わなかったことは人生で5本の指に入る痛恨事だ。
しかし、せっかくヅカ兄がきめ細やかに仕立ててくれた録画Blu-rayは、まったく明後日の方向から私の後頭部に突き刺さった。
『壬生義士伝』だっただろうか、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』だっただろうか。どちらも大変見応えがあって面白かったのだが、実は私のハートを鷲づかみにしたのは作品の後に流れた短いCMであった。
そのころ『NOW ZOOM ME』という望海さんの退団コンサートBlu-rayが発売されており、そのCMが一緒に入っていたのだ。
……見える、見えるぞ、数多のヅカオタの「そこかよ!」というツッコミの嵐が。
だが、考えてみてほしい。
初めてタカラヅカ作品を視聴した素人が、望海さんのズシンと重いシリアスな芝居を浴びた直後に、コンサートの余興で愉快な寸劇を全力で演じるお姿をサンプルの短い尺とはいえ続けざまに見るのだ。
え、待って。これさっき真っ赤な薔薇を敷き詰めた部屋で愛を失った絶望の咆哮を上げていたあの方と同じ人デスカ?
愉快な寸劇は極めてすっとこどっこいな内容で(※褒めている)、全てのすっとこどっこいを望海さんは全力でおやりになるのであった。
牛乳瓶の底みたいなメガネにダッサダサの三つ編みでセーラー服を着て、ふへへと不気味に笑う女子高生を全力で演じるのであった。
ギャップ萌えという言葉がある。振り幅はでかければでかいほど刺さるとされる。
さあ、想像してみよう。初めて望海風斗を浴びた素人が、悲劇とすっとこどっこいの振り幅を望海風斗の演技力と歌唱力で食らうのだ。
ひとたまりもないだろう、そんなもの!
この世にこれ以上のギャップなどあるものか!
Blu-rayはタカラヅカ公式ショップ『キャトルレーヴ』にて通販でも購入できる。
かくて、私が『キャトルレーヴ』で購入した初めてのBlu-rayは『NOW ZOOM ME』となったのであった、どっとはらい。
すっとこどっこい部分が極まりすぎて色々と物議を醸したコンサートであったと後に聞いたが、私が望海風斗さんに落ちた記念すべき作品であるので、私は文句なしに花丸を差し上げたい。
だが、『NOW ZOOM ME』で望海風斗完落ちというのは、若干の十字架を背負った気持ちもしている。
一生物の楽しい十字架だ。
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