【特集】数分で津波が…高齢者の津波避難を諦めない 住民・行政・メディアがともに考える

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  • 串本町役場との無線訓練

  • 和歌山県串本町

  • 田原区長 筒井政士さん

  • 各局の取材場所

  • 津波避難タワーを目指す中道さん(右)

  • 88歳の姉に避難を呼びかける佐野さん

  • ハザードマップ

  • 旧田原中学校での意見交換

  • 山にある一時避難場所

  • 田原地区の逃げ地図と牧教授

  • 訓練後 串本町役場で報告会

阪神・淡路大震災30年 関西民放NHK連携プロジェクト

地震が発生したら数分で巨大な津波が来る。和歌山県串本町では、この過酷な想定に突き付けられ、住民がどうしたら避難できるかという課題に向き合っています。

11月3日、関西の民放やNHKの記者やアナウンサーが串本町内一斉に行われた訓練に参加し、課題を探りました。

数分で津波 高齢者の津波避難は

最大で死者29万8000人と想定される南海トラフ地震。今後30年以内に発生する確率は、60%から90%程度以上とされています。※他の計算方法では20%~50%

本州最南端のまち、和歌山県串本町。人口約1万3000人の半数ほどが65歳以上を占める少子高齢化が進むまちです。想定では、最短2分で1メートル。最大で18メートルの津波が予測されています。高台までいかに早く避難できるかという難題が突き付けられています。

過酷な想定に避難を諦めてしまう高齢者も…

サンテレビキャスター 藤岡勇貴

「この山を登るのは高齢者はきついなという印象を受けた」

串本町田原区長 筒井政士さん

「半分以上が高齢者ですから、避難訓練の参加者が少ないのは理解できるんですよ。ただし、本番になっても逃げなかったらおしまいですよ。私は90歳を過ぎてもいつ死んでもいいわ。そういう声を何回も聞くんですよ」

手すりがなく、ロープだけの場所も。避難を諦めてしまっている高齢者も多いそうです。

関西民放NHK連携プロジェクトの一環で8局が取材

関西の記者やアナウンサーらが和歌山県串本町に集まり、この過酷な想定に向き合うことになりました。

サンテレビキャスター 藤岡勇貴

「避難路を上ってきましたけど、かなりしんどかったです。41歳でこれだけしんどいということは高齢者の方は非常に厳しいだろうなと」

阪神淡路大震災30年を機に始まった関西の民放とNHKが連携を深めるプロジェクト。11月3日、8つの放送局が4カ所に分かれて住民の避難訓練を取材することに。このうちサンテレビは、人口約400人の田原地区の取材を担当しました。

11月3日(月)午前9時 串本町内一斉に防災行政無線の音声が流れる

串本町田原地区に住む中道晶子さん(71)は、家の前にある高さ6メートルの津波避難タワーに駆け上がりました。海抜3.9メートルの場所にあり、ハザードマップでは屋上なら大丈夫なはずですが…。

Q浸水想定ではここまでは来ないが

中道さん「不安ですね。低いですまだ」

海のすぐそばで、心理的な面からいざという時は山へ逃げるそうです。

避難訓練に参加しなかった人にも話を聞きました。

 

Q訓練は参加される?

「とてもやないけど、階段を上がれないもので。腰痛いからね」

Q皆さん上るのが大変という同じ理由で来ていない方も多い?

「と思うね」

防災行政無線が聞こえなかった

姉に避難を促す佐野さん

「逃げなあかんねんで。あそこにみんな逃げているから早く逃げなさい。今すぐ今すぐ。放送(防災行政無線)聞こえなかった?ここへ逃げるんよ。行かなあかん。訓練やから」

田原地区の佐野康子さん(75)。畑にいて外の防災行政無線が聞こえず自宅に帰っていた88歳の姉を連れてタワーに避難しました。

佐野康子さん

「もう今やったら流されているよ。これだけ遅くなったら。年寄り多いからエレベーターがいる。足も腰も悪い」

外に出ていたら聞こえない?

「88歳の姉は聞こえないです。だからこんなに遅くなって来た。車いすの人はどうやってここに上がる?車いすの両方を持って階段上がったりしているけど、それだけの幅ないもんね。これで」

周りを見ても高い鉄筋コンクリートの建物がない

住宅街の真ん中を流れる田原川。タワー以外に周りには高い建物はありません。タワーか少し離れた旧中学校(2階以上)か、山に逃げるかの選択を迫られます。数分で津波がやってくる想定で一刻の猶予もありません。

住民は―

「高齢の人やったら無理やろうね。足が悪いとかね。ここまでというのはなかなか難しいかなと思いますね」

地区の班長は

「地域の方もちょっと足腰が弱ってきていますので、参加率はもうひとつかなと思いますけども、ちょっと高すぎるのでここは足腰弱い人はしんどいと思いますね」

住民約30人が津波避難について意見交換

住民400人のうち参加者は47人。このうち約30人が指定避難所の旧田原中学校に集まり、意見を交わしました。

30年前、神戸で阪神淡路大震災を経験した男性は―

「僕は家の中がぐちゃぐちゃになってなかなか外に出られなかった。神戸で。外に逃げられる経路を確保した方がいいと思いますね」

住民は―

「NHKと民放が一本化(協力・分担)する考え方。大災害になったらスクープも何も関係ないと思う」

佐野さん

「近所でも数人逃げられてないんですよ。姉が放送(防災行政無線)が聞こえなかったと。その時どうするのかということで、やっぱり近所の人に声かけてもらって行くのが一番じゃないかなって」

サンテレビ藤岡

声掛けで気づいた方いらっしゃいますか?聞こえなかった?

住民「聞こえにくいんです」

何を言うているか分からなかった?

住民「はい」

住民

「1人はもう寝たきりで車いすで、奥さんもほとんどヘルパーさんが入っているので、2人とも90歳過ぎているから、声をかけても自分らは逃げることもできないから、柱にくくりつけますと言われた」

「柱くくりつけるって自分の体を」

「うん。もう逃げないって」

「自分が家族だった時に本当に置いていけるものなのかと思ったら」

車での避難はどうか? 車で上がれる高台がない

渋滞を避けるため、原則は徒歩での避難(串本町地域防災計画)ですが、車の避難については?

住民

「その方法もないことはないですよね。ただ、道がきっちりと行けたらね」

「田原の地理的に言って、田原川が流れている。その傍を国道42号が走っていると。それは非常に危険なことやと思う。津波は川を逆上しますからね」

「車はやはり有利やと思うけど、そこはどんな判断で走るかということだと思うんやけどね」

「選択肢の1つということですね」

「逃げ地図」 京都大学防災研究所が住民を対象にワークショップ

田原地区では、2023年からワークショップや出前授業が開かれ、「逃げ地図」づくりによる避難方法の検討が行われてきました。

田原地区での研究に携わる京都大学防災研究所の牧紀男教授

「まずはどういう形で避難ができるのか?そもそも避難が間に合うのかということをちゃんと体を持って知っていただくということで逃げ地図を始めました。逃げ地図というのは、自分で避難地点から色鉛筆で色を塗っていくので、逃げられるのかどうかということをちゃんと頭の中でしっかりと納得する形で理解ができる。まずはもう皆さん諦められているようなところがあったので、逃げ地図を作ることによって、緑(3分前後で避難可能)のエリアがだいぶ広がりましたので、『あら!逃げたら間に合うんだ』というまず意識改革ができたのかなというふうに思います」

今後は、諦めずに命を守れる対策や猛暑でも長期避難できる方法を検討していきたいとしています。

串本町田原区長 筒井政士さん

「参加者が少ないんですよ。京都大学のワークショップの招集をかけても参加者が少ないんですよ。困っていますねん。京都大学の牧先生は『80年も震災にあっていなかったら少ないのは当然ですよ。でも地道にやっていくことが大事ですよ』って。私たちも形を変えていろいろやっていますから」

串本の問題を考えることは全体に通じる

訓練後、各局が4つの地域の課題を報告し、情報を共有しました。

MBS 福本晋悟記者

「完璧を目指すのではなくて、何か一歩でも踏み出すということをやろうとしている地域があると感じました」

NHK 藤島新也記者

「車を途中で乗り捨てるという設定でやったが、車をどこに止めていいのかという問題とか」

 

【講評】 関西大学社会安全学部近藤誠司教授

「激烈な被害想定を出して過酷な数字を出して報道してきたことが罪深いことだったことに気づけたことも大事なステップだなと思っています。多くの人は被害想定の細かい数字を聞くよりかどうすればいいかをずっと知りたかったのにそれがなかなか見つからなくて苦しんでいたんじゃないかなと思うんですね。

津波避難を諦めさせないような、助けたいという思いがくじけないようにするということが次の使命なんじゃないかと。

串本の問題を考えることは全体に通じるはずなんです。串本のお年寄りの命が助かる仕組みができれば、隣のすさみ町から北の方までそれを応用して適用すればみんなが助かるので、串本モデルをつくるんだと」

串本町総務課 杉本隆晴課長

「近藤先生の言葉が本当にうれしいと言いますか、どうしたらいいのかというのは行政の方もそうですし、どう対応したらいいのかなというのはなかなか答えが出ないところで。皆さんが今回の訓練に参加していただいて、こんなに真剣に考えていただけること自体、本当に僕らの力になるんじゃないかなと」

関西の民放とNHKの各局は、12月6日に串本町で住民とのシンポジウムを開催する予定で、今後も南あわじ市など他の自治体との連携も検討しています。

【取材:サンテレビ社会報道部 藤岡勇貴 佐原弘海】

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