国際チャーター便が就航した神戸空港で、安全を守るミッションを託された「水際の番犬」を取材しました。
この春、アジアの空とつながった神戸空港。韓国、中国、台湾の5つの都市を結ぶ国際チャーター便が週に40往復しています。
国際化から2カ月で、利用者は10万人を突破。
インバウンド市場の広がりが期待される中、活躍しているのが、鋭い嗅覚で覚せい剤や大麻など不正薬物を嗅ぎ分け、密輸入を阻止する麻薬探知犬です。
神戸空港の国際化に合わせ、第2ターミナルに派遣されています。
麻薬探知犬を訓練する施設が神戸市中央区にあります。
全国の空港や主要な港に派遣される麻薬探知犬は、税関が育成や訓練を担っています。
主にジャーマン・シェパードとラブラドール・レトリバーの2種類です。
【神戸税関 監視部(ハンドラー) 田邉祥暖さん】
「全国に130頭が各税関で稼働している。神戸での詳細な頭数は公表できないが、複数の麻薬探知犬がいて、神戸港内、神戸税関の管轄内の空港や貨物地域で稼働している」
神戸税関は、兵庫県のほか中国地方(山口県を除く)・四国地方の検査も担っていて、去年は管内で不正薬物を6件告発しました。
神戸空港で検査を担う麻薬探知犬の1匹が、「パクストン号」です。ラブラドール・リトリバーのオス、2歳です。
【田邉さん】
「毎朝やっていることなんですけど、『グルーミング』といって、毛の流れをきれいにしたり、体のチェック、皮膚に何か悪いところがないか、耳とか健康チェックも兼ねている。
とにかくいろいろなところに行きたがる、何でも好き」
パクストン号は東京税関で4カ月間訓練を受け、麻薬探知犬に合格。去年6月、神戸税関に配備されました。
パクストン号とペアを組むのは、ハンドラーの田邉祥暖(たなべ さちはる)さんです。
岡山県出身で岡山県の大学を卒業後、2023年に神戸税関に配属。去年、ハンドラーになりました。
【田邉さん】
「駅で盲導犬が人に行き先を示して、街中で使役犬(盲導犬・警察犬・介護犬など人のために働くイヌ)が社会で役立っているのを見て、使役犬に携わる仕事がいいなというのが最初のきっかけで。
麻薬探知犬という、使役犬と一緒に働く仕事に魅力を感じて志望した。
パクストンは私自身もハンドラー始めて1匹目」
まずは、不正薬物に模したダミーを貨物の中から探す訓練です。
【田邉さん】
「Find it!(見つけて!)…Good boy!」
麻薬や覚せい剤などのにおいを探知すると座って知らせます。
重い任務を背負うパクストン号ですが…、かなりお楽しみの様子。
麻薬探知犬にとって、一番のモチベーションは遊んでもらうこと。
緊張感漂う現場で、パクストン号をいかに楽しませ能力を発揮させるかが
田邉さんの腕の見せ所なのです。
【田邉さん】
「きょうは空港の中で場内検査といって人の身辺の検査をしますので、息の合った検査。そこを目指してやっていきたい」
パクストン号は、もともと貨物を専門に検査していましたが、神戸空港が国際化したのに合わせ、旅客も担当するようになりました。
まだ利用客がいない入国検査場に、私服姿の税関職員たちが集まってきました。
【神戸税関 監視部 剱持由佳さん】
「今から『歩行訓練』といって、外国から来るお客さんが歩いてブースに向かっていくところを、麻薬探知犬に嗅がせて、しっかりにおいを探知できるかの訓練」
多くの人が行き交う入国検査場では、人が動くたびに風の流れも変わります。最後までにおいを追い切る集中力が求められます。
中国・南京からの便が到着しました。「水際の番犬」パクストン号の出動です。
ハンドラーの田邉さん、客を驚かせないよう気を配りながら、パクストン号のテンションをしっかり上げます。
集中力を保つため、2匹で交互に進めますが…
【田邉さん】
「よし帰ろう!」
遊び足りなかったのか、出動おかわり。
息の合ったコンビネーションで、難しいとされる人への検査を無事、終えました。
【田邉さん】
「ペアを組んで1年になるんですけど、次から2年目というところで、神戸税関の麻薬探知犬の中でも人に教えるだったり、引っ張っていくところもハンドラーとしては目指していきつつ、パクストンとは摘発を目指したい。(パクストン号に)がんばろう!」



