【モーグル】TVマン・藤木豪心、“夢”の五輪に挑む

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  • 藤木豪心 /サンテレビ本社(神戸市中央区)

  • 中継スタッフを務める藤木

  • 妹・日菜(右)とともに全日本選手権で3位に /2024年

■国内トップ選手

フリースタイルスキー男子モーグルの国内トップ選手、藤木豪心(ふじき・ごうしん=イマトク 神戸市在住 27歳)が2月に札幌市で行われた国内大会で優勝し、「FISフリースタイルスキーワールドカップ」(2月21日~中国・吉林、2月28日~カザフスタン・アルマトイ)に出場する。

藤木は過去W杯で5位(2017年)、6位(2018年)など好成績を残したアスリート。

“本職”は地上波テレビ局・サンテレビ(本社:神戸市)のスポーツ部ディレクターだ。

■仕事との両立

藤木豪心は2023年にサンテレビに入社した。

スポーツ部に配属され、阪神タイガースの中継や高校スポーツの番組制作などに携わっている。

その一方、夏休みは国内のウォータジャンプ施設でモーグルの練習に取り組み、シーズン中は休日を利用して練習や試合をこなすなど、仕事と競技の両立を図ってきた。

しかし今回のW杯が行われる2月はスポーツ部にとって繁忙期だ。

阪神タイガースの沖縄キャンプに取材班が交代で常駐するほか、毎週のタイガース応援番組をはじめ、男子バレーボール中継、姫路城マラソンなど番組が目白押しで、スタッフは何役も業務をこなさなければならない。

総勢6名のディレクターが1人欠けても厳しいなか、藤木は職場の理解を得て、W杯出場のため公休・年休など合わせて連続14日間の休みを取得できた。

「職場の皆さんに迷惑をかけている。理解を頂き本当にありがたいです」(藤木)。

藤木を後押ししてきた石村雄史スポーツ部長は、

「スポーツの現場で働く我々にとって、日の丸を背負って世界と戦う藤木は誇りです。応援してくれる同僚たちへの感謝も忘れず完全燃焼して、その経験を仕事に生かしてほしいです」とエールを送る。

■オリンピックの夢

藤木は1997年に大阪府阪南市に生まれた。

父親の影響で9歳からモーグルを始め、2013年に「JOCジュニアオリンピックカップ」中学生の部で優勝。

翌年、桃山学院高1年で同カップ総合優勝を果たし頭角を現した。

立命館大1年から調剤薬局「イマトクメディック」(大阪府堺市)から遠征費用などのサポートを受け、競技生活を続けてきた。

この間、オリンピックにも挑戦したが、平昌(2018年)はわずかの差で代表を逃し、北京(2022年)は大会前から不調で代表入りは叶わなかった。

その後、サンテレビへの入社が決まったことで、藤木は全日本選手権の優勝(2022年)を置き土産に第一線から退くことをいったんは決意する。

ところがその頃から「スキーが楽しくなった」(藤木)。

「それまでは使命感があり、競技でも守りに入っていたが、社会人になってからは攻められるようになった。メンタルも安定し、イメージ通りのパフォーマンスが出せるようになった」。

昨年の全日本選手権でも3位の好成績を残し、同じく女子3位の妹・日菜(ひな=現・武庫川女子大大学院)とともに表彰台に上った。

2026年のミラノ・コルティナ大会まで1年。

調子が上向いてきた藤木は再びオリンピックをめざす。

「オリンピック出場は子どもの頃からの夢。いったんはあきらめたが、もう一度、チャレンジしたい」。

■W杯で8位以内を

今回のW杯で藤木は中国大会・カザフスタン大会とも、シングル(1人で滑る)とデュアル(2人が同時に滑る)の2種目に出場する。

計4つのモーグル競技のうち、1つでも8位以内に入れば、来年のW杯出場権が得られ、オリンピックにも一歩近づく。

今回初めて日菜とともにW杯に出場できたことも心強い。

W杯への出発前、藤木はこう語った。

「競技を続けてきて体、特にヒザに負担がかかっている。会社にもいつまでも迷惑はかけられないし、どこかで区切りを付けなければならない。オリンピックへの挑戦は今回で最後にしたい」。

TVマン・アスリートの夢は叶うか――

(浮田信明)

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